投資顧問業協会が定める【投資顧問業業務運営にあたり留意すべき基準】について

コラム

投資顧問業協会に入会している企業には、様々な規則が設けられています。

なかでも利用する顧客との関わりが深い規則に、【業務運営にあたり留意すべき基準について】というものがあります。

利用者が普段あまり関わることのない投資顧問業協会では、どのような規則を設けているのでしょうか。

ここでは投資顧問業協会が決める【業務運営にあたり留意すべき基準について】をざっと紹介したいと思います。

投資顧問業協会の定める基本姿勢

投資顧問業協会の定める基本姿勢

投資顧問業者に対して、投資顧問業協会が求めていることは3つあります。

 

・利用者のために忠実に業務を行うことを基本にしなければならない。

・利用者の資金性格・属性等を把握し、利用者に合った運用をしなければならない。

・特定の利用者の利益を優先するため、他の利用者を害することはしてはいけない。

 

これを基本に、投資顧問業者が業務を運営するにあたって定められているのが、【業務運営にあたり留意すべき基準について】という規則です。

 

※投資顧問業協会の基礎知識はこちらでもまとめています。

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1.適正な価格による取引

投資顧問業協会会員が利用者と取引をする場合、
適正な価格、もしくは市場価値を基準とした適正な価格で取引を行わなければなりません。

2.損失の負担、特別の利益の提供の禁止

金商法で定められているとおり、投資顧問業者は利用者に以下の内容を契約書で明らかにしなければなりません。

・利用者を勧誘するために、損失の全部、または一部を補てんする約束をしてはいけないこと。
・【運用財産の運用として行った取引】や、【助言を受けた取引】で生じた損失を全部、または一部を補てんし、利益に追加するために財産上の利益を提供してはいけないこと。

3.有価証券等の取引

投資顧問業協会会員が有価証券の取引をする場合、利用者の信頼を失わないよう決められた規則です。

(1)会員が自己の計算で行う有価証券等の取引
金商法でも定められている通り、主に利用者の取引を利用して、自分や第三者の利益を得るための助言を行うことや、利用者が行う取引に関する情報を利用して、自分の取引を行うこと等を禁じています。
(2)役員又は使用人が自己の計算で行う株式等及び投資証券等の取引
株式等の取引について社内規定を制定し、利用者の利益や信頼を失わないよう社内研修の実施等によって周知徹底に努めることを定めています。
(3)会員、役員、使用人、関係法人等又は主要株主が自己の計算で顧客の相手方となる有価証券等の取引
会員は利用者の相手方となる有価証券等の取引を行うことを禁じています

(4)証券業を営む会員が顧客の相手方となる有価証券等の取引

会員はある要件をすべて見たしている場合に限って、投資一任契約に関わる業務で、利用者の相手方となる有価証券等の取引を行うことができます。

要件・契約締結の際に、利用者に開示すべき事項を開示して、利用者との合意の内容を契約書・契約細則等に盛り込む。

(5)証券業を営む関係法人等が顧客の相手方となる有価証券等の取引

会員が利用者のために有価証券等の取引を行うとき、証券業を営む関係法人等が相手方となる場合の規定です。

定められた項目に包括事前開示・同意があることと、取引を行う際は決められた項目を取引後に開示することで取引が可能です。

また、会員は相手方から条件提示を受けるなど利用者にとって有利で適正な条件を満たすと判断できて、その判断に関わる記録を保存する場合と、該当する取引が最適執行の観点から利用者の利益になることが資料等で説明可能な場合は、取引後の情報開示を省略できます。

4.有価証券等の顧客資産への組入れ

会員は、自社が発行する有価証券(手形・小切手・商品券・株券など)を利用者の資産に組み入れてはいけません。

ただし、特定の条件を満たす場合は可能です。
組み入れる場合は、利用者の利益や信頼を失わないように十分注意する必要があります。

5.存続厚生年金基金との投資一任契約に関する事項

会員は、存続厚生年金基金と投資一任契約を締結する場合に、守らなければならないルールがあります。

ルールには

  • 分散投資義務に違反するおそれがある場合、存続厚生年金基金に対して通知すること。
  • 会員は存続厚生年金基金の役職員の職務にかかる倫理に関する規定に配慮するよう努めること。

等があります。

6.運用資産相互間の有価証券等の取引

会員は、投資一任契約に関わる利用者の運用資産相互間の有価証券等の取引については原則として行いません。

7.投資一任契約に係る業務の委託

会員は、金商法に基づき、利用者から任された投資判断や権限の全部または一部を委託する場合の注意事項です。

  • 法令の諸規則、協会自主規制ルール等に則って、業務を行うために必要な事項を委託契約書等に規定する。
  • 委託契約書には、委託契約の委託先の責任の範囲、その他争いごとの防止やその処理のために必要な事項について定めること。

等の注意事項があります。

8.顧客の自主的判断に基づく契約の締結

会員は、金商法に基づき金銭、または有価証券を貸し付けることは勿論、貸付を裏付けとした利用者の開拓をしてはいけません。

9.適正な業務運営にあたっての体制整備

会員は、業務を行ううえで上記の本基準を遵守するべく、管理責任者の管理対象にするなどして、健全な業務運営が確保されるよう社内体制を整備しなければなりません。

健全な業務運営にするための基準

健全な業務運営にするための基準

 

【投資顧問業業務運営にあたり留意すべき基準】は基本的に金商法に基づいた基準となっていますが、それをより強化するための監査のような社内体制の整備を強く呼びかけています。

 

これらの基準は基本的に自主規制ルールとなっていますが、規約違反をした企業は資格の剥奪や退会処分も行われています。

 

つまり、それだけ入会している企業は健全であるという証明にもなるので、【投資顧問業協会に入会している】という点で企業を評価する1つの目安となるかもしれません。

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